以前にも書いた通りでして、Gemini と Google Workspace の連携については「仕事がどんどん便利になる!」といった記事を多く見かけます。私も Google Workspace ユーザーなので、便利になる事には大変期待しているのですが…実際のところ、どうなんでしょう。使ってみたら、世のインフルエンサーさんが言うほどには良い動きをしない、あるいは、動くけど「そもそも、それ、ホントに便利?」みたいな働きしかしない…そういう事もある気がします。「単に1回動いたというだけで『便利だ』『すごい』と騒いでる煽りネット記事など信じられねぇ」という私。だったら、自分で試すしかない…という事で今回も Gemini + Workspace を試してみます。
Gemini in Gmail side panel で試す Gemini の実力
Google Workspace には Gmail とか Google Drive とか色んなサービスが含まれています。これらのサービス + Gemini を便利に使っていこう…というのが Google 先生のメッセージなわけですが、アプリによって様々な利用方法が用意されています。例えば、Gmail ならばメールの文案を考えてくれる Help me write、サイドバーから Gemini に依頼を投げる Gemini in Gmail side panel があります。今回は後者について試していきます。
尚、Gemini + Google Workspace って、まだ世界中の言語に適応しているわけじゃないのです。もちろん、日本語未対応のサービスもあります。アプリと Gemini の対応状況の関係については Supported languages for Gemini for Google Workspace というページに詳しいので、自分が試してみる際は「このサービスって日本語対応しているかな?」という事について調べるようにしましょう。
「このメールを要約」ボタンを押す=「このメールをより詳細に要約して」と依頼
メールの要約をして欲しい。そんなときは、まず Gmail でメールを開きましょう。その後、Gmail の画面の右上部にある ✦ みたいなマークをクリックして、Gemini in Gmail side panel を登場させます。素晴らしい事に、メールを選択した状態でサイドパネルを開くと、以下のボタンが存在します。
このメールを要約
どうやら、このボタンを押せばメールの要約を始めてくれそうです。さっそくクリックしてみますと…メールの要約は始まらず。よく見ると、依頼文を入力するためのテキストボックスに、以下の文字がセットされています。
このメールをより詳細に要約して
これを送信すれば、メール文章の要約が始まります。
長文メールについては、そこそこ納得できる要約が!
どんなメールに対して、どんな要約が出てくるのかを見て頂いた方がいいな…と思うんですが、私個人宛に来たメールはちょっと見せられません。ただ、丁度いいメールがありました。インターネット上でも公開されているメーリングリストからのメールです。今回は九州大学の「生涯メールアドレス」を持っている人に流れてくるメールを要約させてみます。本文は以下です。
これを要約した結果が以下です。是非、本文と比較してみてください。
こちらはどうでしょう。
- 九州大学基金は、寄付者への特典として、姪浜ドライビングスクールの教科書代と写真代の無料サービスを提供しています。
- 基金は、学生支援、教育研究活動支援のため、寄付を募っています。寄付は税制上の優遇措置の対象となり、一定額以上の寄付者には特典があります。
- 半導体・デバイスエコシステム研究教育センター開所式、高大連携成果発表会など、様々なトピックが紹介されています。
- その他、研究成果、同窓会だより、イベント情報、お知らせなどが掲載されています。
- イベントには、有機光エレクトロニクス産業化研究会、市民公開講座「九州がんプロが発信する 最新がん医療情報」、受賞作品展などがあります。
- 九州大学は、同窓生・教職員が無料で利用できるウェブサイトを提供しています。
完全な主観ではありますが…悪くないです。今回、要約も元の文章も両方読んでみたのですが、「このメールをコンパクトに要約するとしたらこうだな」って内容にはなっていると感じました。再現性が見たくて、他にも何通か同じ操作をしてみたんですが、概ね問題ありません。要約能力はちゃんとしてる!
相当なラリーを重ねてしまったメールでも、経緯を要約してくれた!
何往復かラリーが続いているメールのやり取りについて、要約をお願いしてみると、(元の文章はお見せできないのですが)このような文章が出力されました。
こちらはどうでしょう。
- <A氏>はD4cアカデミーに2025年度の社内講座の企画書シラバス案と見積もりを12月末までに提出するように依頼した。
- <B氏>はその後、提案資料と見積もりを送付した。
- <A氏>は理論に関する講義のコマ数を減らし、演習とグループ活動に時間を割くことを提案した。
- <B氏>は提案を受け入れ、フィードバックのタイミングと併せてシラバスを修正すると回答した。
こちらも悪くありません。内容は正しいです。面白いのは、実際このメールのラリーって全部で4往復(都合メールにすると8通)続いているのですが、あまり話に進展のなかったメール(ちょっとした挨拶だったり…)は無視してくれているのです。やり取りの中で、そこそこ重要な事をピックアップしてくれています。(もちろん、何を「重要とするか?」という認識がどうしたって人間とズレてますので、100%、文句のつけようがない要約か?と問われれば、必ずしもそうではないのですけど。)
こちらもいくつかのメール(ラリーあり)に対して試してみましたが、そんなに悪い印象は抱きませんでした。少なくとも「(往復している内容も含めて)メールを要約する」という機能は果たしていると思います。すごいぞ、Gemini。
「メールの要約」って、いつ必要なの?
機能する事はわかりました。「機能する」なんて言ってはおこがましい。ちょっと感動できるレベルです。コレは積極的に使うべし!
あとは、この機能をどのように使うのか?って話だと思います。
…ここでふと我に返ってしまいました。メールの要約っていつ使うんでしょ? ちょっと真面目に考えてみたいと思います。
- 常に要約させるってのはどうでしょう?
- 正直、微妙です。Gemini の「メールを要約」ボタンを押して、「このメールをより詳細に要約して」という依頼を投げ込むまでに 1 秒かかるとします。その後、Gemini が要約文を作るのに、短いメールでも2秒、普通のメールでも3~5秒かかります。で、出力された要約文を読む時間まで考えると…。普通のメールならば、そんなに時間があったら読めちゃいます。
- 長文のメールが来た時に要約させるってのはどうでしょう?
- これも、微妙なところがあります。確かに長文の場合、「先に要約文を読んでから、ある程度、頭に入っているところで、詳細は本文を読む」って読み方はアリだと思うんです。ただ、要約文の処理時間が結構長い。例に挙げた Qdai-mail 通信ぐらい長いと処理時間5~6秒→要約を読んでから本文に着手…ってのは効率的なのですが、普通のメールだと「処理時間5~6秒」が結構命とりで、その時間の間に読めちゃう…ってのがあるんですよね。
- メールの往復が長くなってきたら要約させるってのはどうでしょう?
- 微妙と言えば微妙。何往復もしているメールだとしても、1通1通が短ければ、話題ってロストしないんですよね。正直。少なくとも自分が返信する必要があるやりとりなら、基本的には把握できています。
…メールを要約できる能力はスゴイのですけど、活かしどころが見えない。これはマズいと思います。ちょっと頭を抱えてしまいましたが、1つ、ユースケースとして『自分が主担当じゃないメールのやりとりの要約』ってのを思いつきました。
私が直接やり取りしないメール連絡について「CC に入れておくから、お前も見ておくんだぞ」「CC に入れている以上、報告・連絡はしているからなー」と言わんばかりに、私のアドレスが CC に入っている事があります。そして、私が内容を読まない間に、メールが30往復ぐらい行ったり来たりして「もう読みたくないな…」って状態に陥ってたりする事があります。
そもそも、そんな状態で CC に入っている事自体、日本の悪しきビジネス習慣というか、そういう感じがするので、少しずつ「どうせ読まない(読めない)んだから、私を CC に入れないでくれ」とお願いをしてきました。結果、その手合いのメールは相当に数が減りましたが…。
で、思いついたですが、この手のメールを要約させるといいんじゃないかな、と。「とりあえず CC 」で飛んでくるメールなんて読むわけないんですけど、CCに入っていない以上、後から「ちょっと読んでみてくれ」と言われても、読むことができません。そこで、「とりあえず CC の廃止」をやめ、「とりあえず CC 」でもメールを受ける事として、その上で、必要になったら Gemini に要約させるところからスタートするって方法は、もしかしたらアリなのかもなあーと感じました。
私の結論:メール要約は機能する。あとは、いつ使うか?を人間が考えるだけ。
Gemini によるメール要約は、少なくとも、機能としては成立してます(調査は2025年2月5~6日で1回、2025年5月20日1回実施しました)。ちゃんと要約をしてくれます。ただし、ビジネスをしていて、「メールの要約」なんて知りたい事があるのか?って議論はあると思います。この機能の課題は、「いつ使うか?」ですね。
人間もそこそこ優秀なので、多くのメールについていえば、Gemini に要約させている間に本文を読めてしまいます。ここをわざわざ Gemini に任せるからには、任せなきゃいけない・任せた方が便利なケースを見つけなければなりません。
Gemini に限らず、道具って何だかんだ「アプリケーション」が大事なんですよね。スマートウォッチが期待されたよりも伸びなかった理由って「『スマホをポケットから取り出して使う』というスピード感ではダメなユースケースが無い」って話があると思うんです。「腕時計から LINE 見えれば、着信から1秒程度でメッセージを読めるけど、スマホ取り出してからメッセージ確認したって 5 秒あれば見えるよね」ってリアルが突き付けられたとき、その 4 秒差を削って得る価値って何?って話はあると思うのです。(もちろん、スマートウォッチは他の機能もあるので、その機能が欲しくて購入する人も居て、それは全然、否定しないんだけど…。)
「メール要約」についても、「いつ使う」「こう使えば良い」ってケースを考えないとなーと思いました。ちょっと知恵を絞って考えてみて、何か思いついたら、このブログで紹介していきたいと思います。私としては Gemini には期待したいんですよねー。
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